日本カイロプラクティック徒手医学会 JSCC

学術大会

第12回学術大会

開催日:
2010年09月04日(土)05日(日)
会 場:
電気ビル本館地下2階
テーマ:
痛みを考えるー最新感覚受容器研究に基づいてー
基調講演
◇「痛みを考えるー最新感覚受容器研究に基づいてー」
◇熊本保健科学大学大学院 保健科学研究科 教授 吉村 惠
特別講演
◇「CRPSに対する神経リハビリテーションとそのメカニズム」
◇東京大学医学部付属病院 麻酔科 痛みセンター 助教 住谷 昌彦
ワークショップ
◇「肩関節・股関節周囲の筋肉を再考する-機能障害への対処法-」
◇スズキ・カイロプラクティック 院長 鈴木 喜博

◇「腰痛患者における腰椎生理的彎曲の評価及び治療の重要性」
◇ハンズオン グループ 代表 小倉 毅

基調講演
9月5日(日)10:20~12:05
◇「痛みを考えるー最新感覚受容器研究に基づいてー」
◇熊本保健科学大学大学院 保健科学研究科 教授 吉村 惠
yoshimura
痛み刺激は末梢自由神経終末に発現している痛み受容体を活性化し、活動電位が惹起され、それが脊髄に伝えられ痛みとして屈曲反射、すなわち熱い物に触ったとき手を除ける反射が起こる。これは脊髄レベルにおける反射で、大脳で熱いと知覚されて払いのけるのではない。しかし、この感覚が脊髄から上位中枢に上行し、最後には大脳皮質にたっして私たちは熱いと知覚する。このことはずっと以前からわかっていたが、それでは熱を感受する皮膚の受容体はどのような物かは、1997年になって初めてクローニングされ、TRPV1と命名された。それ以来、熱のみでなく冷、機械的刺激に応答する受容体が報告され、痛みの基礎的な研究は大きく発展してきた。しかしながら臨床で見られる痛みとは乖離があり、基礎的なデータをそのまま臨床に結び付けるのは未だに困難である。そこで、本講演では基礎的なデータと臨床との相違についてわかりやすく解説したい。

特別講演
9月5日(日)13:35~15:20
◇「CRPSに対する神経リハビリテーションとそのメカニズム」
◇東京大学医学部付属病院 麻酔科 痛みセンター 助教 住谷 昌彦
sumitani
CRPS (complex regional pain syndrome:複合性局所疼痛症候群)の発症機序には、末梢組織中の炎症性サイトカインの関与や末梢神経系の感作以外に脊髄レベルでの感作、さらには脊髄上位中枢(主に大脳レベル)での機能再構築の関与が示唆されているが、未だ一定の見解は得られていない。これまで我々は、病的疼痛は大脳認知機能の異常に由来するという立場から、CRPS患者の視空間知覚障害の障害を明らかにし、視野偏位プリズム順応を用いた視覚経験の修飾による疼痛治療を実践してきた。この神経リハビリテーション的治療アプローチは、視覚経験を修飾することによってCRPS患肢の運動機能を改善する結果、大脳表象での患肢の知覚-運動協応が再統合され疼痛が寛解していると考えている。本発表では、CRPSや神経障害性疼痛に対する神経リハビリテーションについて、ヒト大脳生理・認知神経科学的観点から概説する。

ワークショップ(2題
9月4日(土)12:35~14:05
◇「肩関節・股関節周囲の筋肉を再考する-機能障害への対処法-」
◇スズキ・カイロプラクティック 院長 鈴木 喜博
suzuki
ここ数年、肩関節や股関節の障害への対処法を思い巡らしてきた。基本的には関係する筋肉一つひとつに対してその状態を把握し、障害(過緊張、硬結等)を解消することになる。しかしながら、多くの筋肉が関与しているため、どの筋肉に障害があるのか、まずは特定しなければならない。それなりに習熟する必要はあろうが、臨床的に簡便でほぼ適確に見つけ出す検査法を紹介する。次に、障害を持つ筋肉への対処法についての考えを述べ、個々の筋肉へのアプローチをお見せしたい。

9月4日(土)15:00~16:30
◇「腰痛患者における腰椎生理的彎曲の評価及び治療の重要性」
◇ハンズオン グループ 代表 小倉 毅
ogura
腰部疾患には腰椎椎間板ヘルニアや、腰椎すべり症など様々なものがある。その疼痛の原因には、椎関関節の問題、椎間板の問題、腰部筋の問題などがあるが、その基本的要因は腰椎生理的彎曲の状態にある可能性が考えられる。本検討では、腰椎生理的彎曲異常と各腰部疾患との関連について考察する。また、腰椎生理的彎曲異常に対するカイロプラクティック的対処を紹介する。

大会長挨拶
◇フィニッシュ・カイロプラクティック研究所 荒木寛志

araki
福岡でJSCC学術大会が開催されます。テーマは「痛みを考える」です。我々カイロプラクターにとって、臨床で一番多い訴えは「痛み」であります。この「痛み」という訴えは患者さんだけでなく、施術する我々側も苦しめられるものですが、近年、従来の考え方では説明のつかない痛みについて、それを伝える侵害受容器の姿が次第にわかってきたのです。基調および特別講演では、痛みの認知と鎮痛の最新メカニズムをお伝えいたします。またワークショップでは、鈴木 喜博、小倉 毅の両D.C.による臨床に即した内容をご講演していただきます。それでは皆さんと福岡でお会いできることを楽しみにお待ちしております。